bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
「ただでさえ、年度末で忙しい時期に、唯野君が退職するということで…」
そう軽い嫌味を言いながら、笑いなのか苦笑いなのか分からない参加者の笑いを誘って締めの挨拶を始めた部長を見ながら
本当にそうだよ。
そのせいで、本郷主任は超がつくほど忙しくて、デートも出来ないじゃん。
心の中で、そう悪態をついた。
「ごめんなさいね。本郷主任忙しすぎて、2人の時間取れないでしょ」
私の心の声が聞こえたのだろうか。
耳元でこっそり囁かれて、私は思わずその声の方向を睨んだ。
その勝気な口調と、男を誘惑しそうな甘い香水の匂いでエリカ先輩だということは顔を向けずとも分かった。