bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-


退職直前になって、唯野主任とエリカ先輩が付き合っているとか結婚するという噂が社内を駆け巡った。




それは唯野先輩の次の就職先がエリカ先輩の実家だということが判明したからだった。




「本当に、迷惑です」



私は視線をエリカ先輩に向けず、部長の話を聞くふりをしながら、笑顔で嫌みのないように呟いた。




エリカ先輩はおかしそうに笑って、

「色々と安藤さんのおかげだわ。それから、いろいろごめんなさいね」

そう耳元で囁いた。




何の事だか分からず、思わずエリカ先輩の顔を見る。


ハーフらしい大きな瞳と高い鼻筋が美しくて、同性の私でも見惚れてしまう。






そんな彼女が少し恥ずかしそうに頬を赤らめて

「私、駿介さんと結婚するの。」

一言耳元で囁くように言うと、エリカ先輩はそそくさと唯野主任の隣へと足を進めていった。




「おめでとうございます」

誰にも、聞こえないほど小さな声で私は2人に祝福の言葉を贈った。

 

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