bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-

タクシーに揺られること20分。


タクシーの中で私たちの間には会話なんてなかったけれど、ずっと繋がれたままの本郷主任の手のぬくもりが伝わってきて、心が満たされていくようだった。

 




着いた場所は、本郷主任のマンションだった。




まだ新築の匂いのする2LDKのマンションは、黒と木目調の家具で統一されたシンプルモダンで開放感のある室内を間接照明が暖かく照らしていた。

 


1人暮らしにしては広すぎないかな…

 

なんて考えながら、部屋全体をきょろきょろと見回していると



「時々、妹が泊まっていくんだ。さすがに同じ部屋では寝れないだろう」




心も声が聞こえたかのように、コートを脱ぎながら答えてくれた。

 
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