bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-


なんだか気恥ずかしくて、俯いてしまうと、ふとソファテーブルに置かれた本郷主任のコーヒーカップが視線に入ってきた。



いつも私が朝から淹れるブラックコーヒーの色とは明らかに異なるミルクのたっぷり入ったカフェオレ色。




「あれ?コーヒーはブラックじゃないんですか?」


不思議に思って、本郷主任に肩を抱かれたまま尋ねると、

「普段はブラックだな。夜は甘いものが良い。ホットミルクみたいなもんだな」




見上げた本郷主任の横顔が、あまりにも近すぎて、少し恥ずかしそうに目を細める本郷主任の顔がなんだか可愛らしくて私はちょっと笑ってしまう。



「プライベートは、色々と甘めなんですね」





朝は職場で濃いめのブラックコーヒーを好む本郷主任が、家ではミルクがたっぷり入った甘めのコーヒーを飲む。




それと同じように、仕事では厳しくて仕事の鬼だと言われている本郷主任が、私には不器用で言葉は少ないけれど、真っ直ぐな気持ちを伝えてくれる。




そのギャップがなんだかものすごく愛おしくなった。




「なんだよ、それ」

少しだけふてくされたように呟く本郷主任の肩に私は頭を委ねた。



本郷主任は委ねた頭を撫で、髪の毛を指で弄んだ。



本郷主任のいつもの煙草の匂いと甘いムスクの香水の匂いに包まれて、幸せをかみしめた。

 
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