bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
「それから…?」
私が尋ねると、いつものぶつくさとした口調で本郷主任はようやく口を開いた。
「俺の方がひかりに会えないのが耐えられない。ひかりが好きだから、これからは俺だけのためにコーヒー淹れてくれたら、今日も明日も頑張れる」
不器用な本郷主任の、不器用なりの精いっぱいの愛情表現がこの上なく嬉しくて、心が満たされていく。
私は本郷主任にこの気持ちを伝えたくて思わず抱きついてしまった。
本郷主任が大きな腕で私を包んだくれたから、私は耳元で囁いた。
「お世話になります」
本郷主任の表情は、みるみるうちに柔らかくなり、私を見つめた。
私はそれに応えるように見つめ返すと、どちらからともなく顔を近づけた。
そしてゆっくり私たちは下弦の月が照らす車内でお互いの愛を確かめ合うように唇を重ねた。
それはそれはコーヒーシュガーのように甘く、そして優しく夜の闇へと溶けていった。
Fin.