bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-

自分の席から、新聞を読みながら、表情一つ変えずコーヒーを飲む本郷主任を盗み見る。



モデルのように整った顔にパーマをかけた柔らかそうな髪の毛は光にあたって茶色く輝いている。

身長も高く、細身の体に、筋肉が無駄なくついている。

少しだけ日に焼けた肌に白いシャツが良く似合っている。


昨年4月にヘッドハンティングされ、異例の若さで、広報チームの主任の座についた30歳。


入社式では私と神部君の隣に座っていたが、私たちとは全く違う存在感を醸し出していた。

その容姿と仕事の出来る男のイメージで他部署の女性社員から人気で、狙っている女性社員も多いと聞く。



確かに黙っていれば、本郷主任は、かなりのイケメンであるが、部下ともなると話は違う。

1日に最低1回は、誰かを怒鳴っている仕事の鬼だ。

私もこの1年3ヶ月の間に数え切れないほど怒られた。

仕事に対しては自分にも他人にも厳しい、仕事の鬼の本郷主任が私は正直苦手である。
 
「黙っていれば、かっこいいのに…」

そんな口が裂けても言えないようなことを考えながら、自分の淹れたコーヒーを飲む本郷主任を見つめていると、ふと目があった気がして、

「集中、集中・・・」
自分に言い聞かせ、昨日やり残していた庶務を済ませると時間はもう8時をとうに過ぎていた。

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