bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
conflict-本郷sideー
やってしまった。
やってしまった。
居酒屋のトイレの一室で、アルコールの入った頭の中で後悔だけが駆け巡る。
唯野さんに
「俺、安藤さん狙ってますから」
そう言われてから調子が狂っている。
3日前、一大プロジェクトの話が企画広報部に持ち上がった。
部長と唯野さんと3人でメンバーを選ぶミーティングで
「経験を積ませたい意味合いもありますので、今回企画チームから神部をアシスタントに選出させてください。」
唯野さんが部長に頭を下げた。
部長もその意見には賛成のようで快諾すると、俺に身体を向け直した。
「神部を入れるなら、安藤もアシスタントに入れるか?内海も仕事が出来ると言っても、子供が小さいと何かと動けないだろう」
「いや、まだ安藤には・・・。内海の分は俺がフォローします」
部長の提案に俺が口ごもる。
確かに安藤にとってはいいチャンスかもしれないが、まだ荷が重すぎると思ったのは本心だった。
そんな俺を目を細めて、いつもの見下すような視線で唯野さんは見ていた
「本郷さん、それ私情挟んでないですよね?安藤さんにはいいチャンスじゃないかと思いますが」
淡々とした口調で話す唯野さんに、部長も頷く。
私情をはさんでいるのはどっちだよ。
そう言い返したかったけれど、部長の眼の前でそんなこと言うことも出来ず拳を握りしめた。
2対1という状況になり、ここは安藤をメンバーに入れるしかなかった。
俺が承諾すると唯野さんは一瞬ニヤリとして鼻で笑った。