bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
パソコンの電源を入れながら、大きく息を吐きだして、余計な考えを一気に頭の中から追い出すようにして残っている仕事を片付け始めた。
「コーヒー、どうぞ」
二人だけのフロアに重なりあうタイピングの音が心地よく響いていた。
急にそのタイピングの音が1人分になったのに気付いて安藤に目をやると帰宅準備をしていた。
「帰るのか?」
「はい、これ、片付けたら」
コーヒーカップを片付けようとしている安藤は、振り返りもしなかった。
「安藤、飯食いにいくぞ」
咄嗟に誘ってしまった俺は、あからさまに戸惑っている安藤の返事も聞かず
「それ片付けたら、俺ももうすぐ終わるから、待ってろ」
そういうと、安藤はそのまま給湯室へと消えて行った。