bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
圭吾から最近教えてもらった郊外のカフェレストラン。
本当はいつもの居酒屋にでも行こうかと思って誘ったのに、日曜の夕方といういつもと違うシチュエーションのせいなのか、安藤の恰好や雰囲気がいつもと違うせいなのか、ついここに連れてきてしまった。
女子が喜びそうなオーガニック野菜を取り入れた料理に安藤も嬉しそうにはしゃいでいる。
圭吾がおススメしていたメインディッシュの赤ワインで煮込んだ牛ホホ肉が口の中でとろける。
目の前で美味しそうに食べている安藤を見ながら
「そう言えば、2人きりで飯食いにきたのは初めてだな」
ふと思ったことが口に出てしまった。
「はは、そうですね」
安藤は一瞬にして頬を赤く染めて、戸惑った顔をしながらも無理やり笑顔を作っている。
「お前、何急に意識してんの?俺、部下に手ぇ出すつもりねぇから。ましてや安藤、お前は・・・」
「意識なんてしてませんから!!!」
明らかに意識している様子の安藤は、そうやって否定した。
「俺、部下に手ぇ出すつもりねぇから。」
その言葉を自分の胸に言い聞かせる。
自分の気持ちに蓋をしながら
「安藤はあくまで部下の一人」
その言葉で余計な気持ちを追い出しながら、俺は料理を食べ終えた。