bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
あの日曜出勤から1ヶ月半が経とうとしていた。1週間あったお盆休みも終わり、プロジェクトチームでの動きも本格化している。
昼休み、喫煙所で一服しながら白い煙と一緒に大きく息を吐きだした。
後ろで音がすると、神部が汗をかきながら缶コーヒーを片手に喫煙室に入ってきた。
「あっ、本郷主任、お疲れ様です」
軽く挨拶しながら、ライターでたばこに火をつける。
「お疲れ、神部は外回りか?」
「はい。プロジェクトの件で。竹之下さんと。来週また現地に視察に行ってきます。」
神部は、プルタブを開けてコーヒーを勢いよく喉に流し込んだ。
「お疲れ、そっちも大変だな」
ははっ、っと苦笑いしながらも、神部は目を輝かせる。
「本当、先輩方に勉強させてもらってます。広報チームも忙しそうなんで、俺らも頑張らないと」
新人の頃から、チームが違うのによく俺を慕ってくれる神部の成長には、このプロジェクトを通じて目を見張るものがある。
唯野さんも見込んでるだけあるな
そう思っていると、
「そういえば、最近安藤さん、唯野主任と仲いいですよね。なんかあるんですかね」
「そうか?」
急に神部が話を変えたので、つい知らないふりをして答えてしまう。
「いや絶対そうですよ。くっつくのも時間の問題ですかね~」
興味なさそうに返事をしながら、俺は短くなった煙草を灰皿に押し付ける。
「さて、そろそろ戻るか。じゃ、今度飯でも行くか」
疲れの色の見える神部に声をかけ、喫煙室を後にした。