bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-

1ヶ月半前の出来事は、その後、急にプロジェクトが忙しくなってしまったこともあり、まるで何もなかったかのように時間だけが過ぎていた。



ただ1つ関係が変わったのは、唯野さんが安藤とよく2人で話す姿を見かけるようになったこと位だ。



そのことを思うと、苛立つ自分に

「安藤は、あくまで部下」

いつもの言葉を言い聞かせ、相変わらずパソコンとにらみ合いをしている安藤に見ていると、急に視界が遮られた。



「本郷主任のかわいい、かわいいひかりちゃんが、誰かにとられそうでハラハラする位なら、先に奪っちゃえば?」


誰にも聞こえない小さな声で含み笑いを浮かべて、香奈子が立っていた。

「何言ってんだよ。仕事しろよ」



自分の思いが筒抜けなのかと錯覚するほど、的を射た香奈子の発言にドギマギして答えることしかできない



見透かしたように見つめる香奈子の視線が突き刺さる



「まっ、今昼休みですから!!!本郷主任、明日の会議の資料の確認、今日中にお願いします。私これから業者と打ち合わせに出てきます」



手渡された資料を受け取ろうとした瞬間、香奈子の顔が近付き、

「一馬、あんた本当にひかりが好きなら、ちゃんと捕まえときなさいよ。」

「ったく。そんなんじゃねぇから。」



耳元で真剣な声で言われたが、すぐさま否定する。

「それから、少しは部下の心身の健康にも気を配ってくださいね」


わざとらしくニコッと微笑み、少し大きな声で言った香奈子が何を言いたいのかくらい分かる

「はいはい」


感情を込めずに返事をすると、香奈子はそそくさとフロアを後にした。

 

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