bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-


本郷主任のプレゼンを聞きながら、私は照明の落ちた室内では無意識に出て来るあくびをかみしめた。


社長や会長を中心に初めてみる会社の役員のおじ様たちが本郷主任の話を前のめりで聞いている。


この会議でミャンマーのイベントに関する予算が決定するから、プロジェクトチームのメンバーも緊張した面持ちで出席している。


「明日の会議、成功したらうまいもんでも食いにいくぞ。」



昨日、残業して日付が変わる瞬間、背伸びをしていた本郷主任は、残っていた社員たちに明るい声で言っていた。



張り詰めていた緊張がこの時だけはなんだかほぐれていて、最近外回りや出張が多くて疲れた顔していた神部君もいつもの笑顔を見せていた。



いつもはほとんど残業しないようにしている本郷主任が、この1週間は日付が変わる頃まで残業していた。



昨日、本郷主任、何時に帰ったんだろう


そんなことを思っていたら、本郷主任のプレゼンが終わり、役員会は拍手に包まれた。


終わった瞬間に本郷主任に私が集中していなかったところを見られた気がして、また後で怒られるかと思うと恐怖で背筋が伸びた。

 
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