【短】あめだま。~きみと出会えた奇跡~
私はふたりに気付かれないようにあめだまを胸ポケットにしまうと、上履きを適当に履いた。
「ごめんごめん。いろんなこと考えて、ちょっとボーッとしてた。ほら、行こっ!」
「ったく、お前は……」
「ごーめんって、湊人!冬真も、ごめんね?」
「いや、俺はいいけど……」
私はふたりを置いて少しだけ前に進む。
靴箱にあめだまが入っていたことは、ふたりには言えなかった。
なんでだろう。
私にもよく分からないけど、このことは私だけの秘密にしたいなって、そう思ったんだ。
「おーい、湊人、冬真!はーやーくっ!置いて行くよー?」
くるっと振り返った私の瞳に、あきれた顔の湊人と、なんでそんなテンションが高いのかなと不思議そうな顔の冬真が映る。
私はそんなふたりを見てクスッと笑うと、教室に向かって歩きだした。