【短】あめだま。~きみと出会えた奇跡~
「冬真、湊人くん、莉桜ちゃん、行ってらっしゃーい!」
「気を付けて行くのよ!湊人、それから冬真くん!莉桜ちゃんは何があっても守りなさいよー!」
急に聞こえた声に左右を見ると、それぞれの家から湊人のお母さんと冬真のお母さんが、私たちに手を振っていた。
だから私も、おばさんたちに大きく手を振り返す。
「ったく、いい年して手なんか振ってんじゃねーぞ」
「え、私?」
「莉桜じゃねぇよ。俺らの母ちゃんたち。さすがに高校男児になって、手なんか振り返せるかよ」
湊人は眉をひそめてそう言う。
だけどね、私、知ってるんだから。
湊人や冬真が心の奥底で、お母さんがいつまでも変わらずにいてくれることを嬉しく思ってること。
それに、私も嬉しいんだ。
いつまで経っても、こうして家族ぐるみで仲良くしていられることが。
湊人と冬真。
大好きで大切なふたりといられることが、私は本当に嬉しいんだよ。
左側にいる湊人の顔と、右側にいる冬真の顔を交互に見上げながら、私は俯きがちにそっと微笑んだ。