僕を愛した罪
宮口が部屋を出て行ったのを見計らい、
部屋を抜け出そうと試みた。
だけど庭に出てみても、待っているのは有刺鉄線で。
出られなくて策ばかり考えて、結局宮口に捕まって。
『坊ちゃま。いけませんよ?
そんなことをしていたら、旦那様に怒られますよ』
『……俺も、クラスメイトみたいに、遊びたい』
『いけません、坊ちゃま。
坊ちゃまは、旦那様の息子様なのですから。
他の生徒と同じよう過ごしてはいけませんよ。
それに坊ちゃま、言われていますでしょう?
ご自分のことは“僕”と言いなさい。
そして常に敬語をお使いになられるよう、言われていますでしょう?
旦那様の言うことを、お守りください。坊ちゃま』
あの男は成績面だけでなく、口調まで指示してきた。
幼い頃は良かった。
皆同じようだと思っていたから。
だけど学校と言う集団生活を学ぶ場所で、俺は知った。
俺だけが、特殊だったのだと。
グラウンドでクラスメイトが楽しそうにやっていた、サッカーやドッジボール。
楽しそうで、混ぜてくれと頼んだことがある。
『……ごめんね。桐生くん。
ママに言われているんだ。
桐生くんを、遊びに誘わないでって』
あの男がクラスメイトの親にそう言っているのだと、後日知った。
…信じられなかった。