僕を愛した罪
オレンジ色の灯が照らすリビング内は、静かだった。
聞こえるのは、あの人の声だけ。
「…お前には、お前の人生がある。
だったら、お前の好きな人生を歩めば良い。
そう思って、引き止めなかったんだ」
「…………」
本当は、僕を引き止めたかった。
だけど、僕に好きに人生を歩ませるために。
…あの日、僕を、引き止めなかった。
「……これからは、好きにしなさい」
「…………」
「幸い、お前を気に入る彼女も現れたみたいだからな」
ふっと彼女を見て笑う、あの人。
…あの人の笑顔を見るのは、いつぶりだろうか?
いつも、あの苦手な冷酷な眼差しで、怒りの形相をしていたから。
笑顔なんて見るのは…久しぶり、だった。
「…まぁ、たまには戻って来なさい。
宮口も、坊ちゃんは元気かってしつこいからな。
たまには顔を見せてあげなさい」
「……はい。…お父様。
…考えておきます」
素直に帰る、なんて言わなかった。
今の家、独り暮らしするには広いけど、気に入っているから。