僕を愛した罪
「桐生くんはねー、あたしの未来の旦那様なのー」
漫画でしたら、
きっとハートマークが彼女の周りをグルグル回っていたでしょう。
そう思えるほど、彼女の顔は緩み切った満面の笑みでした。
「桐生くん…エヘヘ」
「…………」
妄想の世界にトリップしてしまった彼女を無視し、
僕はトンカツに齧りつきました。
かなり柔らかく、ジューシーです。
トンカツ専門店に来た気分でした。
「桐生くん。
ママの手料理美味しい?」
「ええ」
本当のことなので、素直に答えます。
すると芽衣子さんが嬉しそうに笑いました。
その緩み切った笑顔、彼女にそっくりです。
「良かったわお口に合って。
愛ちゃん、今度作り方教えてあげるわね?
未来の旦那様に作ってあげなさい?」
「はぁい!」
「め、芽衣子さん……?」
どうやら芽衣子さんは勘違いしているようです。
きっと違うんだと言っても、信じてくれなさそうです。
僕は息を吐きだすと、今度はご飯を口に運びました。