僕を愛した罪
「そういえば昨日、セイくんが帰った後にね、お客さんが来たんだよ?」
「お客さん、ですか?」
「そう。
物凄く有名な人だから、セイくんに会わせてあげたかったなぁ」
「有名な人、ですか。
生憎僕は芸能人などには興味ないのですが…」
「芸能人じゃないよ。
もっともっと有名な人。
パパは時の人って言ってた」
「時の人…ですか」
でしたら僕も知っている人がいますね。
ニュースは毎朝、欠かさず見ていますから。
…きっと、クセでしょうね。
あの頃の。
「そう。
次期総理大臣候補、桐生星太郎さんだよ!
セイくんでも知っているよね?」
その名前に、僕はポーカーフェイスを保つのに必死でした。
そして興味なさそうに、「そうですか」とだけ呟いておきました。
…知っているも何も、その男は僕の……。
「そういえば桐生って、セイくんと同じ名字だね。
もしかして息子?」
「…なわけないじゃないですか。
僕はそんな有名な方と知り合いじゃないですよ。
桐生という名字も珍しくありませんからね」
焦っているのがわからないよう、
いつものトーンで話すのを心掛けました。
…バレたら大変ですから。