愛し愛され恋せよ乙女っ!
と、心の中で高笑いをしていたあたしの視界に映ったのは、最近よく見かける女の子。
たしか隣の隣のクラス。
名前は知らん。
その子は凛を見つけるなり手を振りながら駆けてきて、カバンからスポーツドリンクを取り出すとそれを凛の手に握らせた。
「凛君お疲れ!さっき補習終わってさ!ハイ、コレ!」
「あーありがとう」
「ふふっ、どういたしまして!
って、アッいけない!教室にケータイ忘れてきちゃった〜…
ごめんねっ!ちょっと取りに戻る!」
「ん、わかった」
そう言うがいなや、その子はクルリと踵を返して体育館を後にした。
「…………」
なんだなんだ?あの雰囲気。
よくドラマで出てきそうな今のシチュエーションは何なんだ???
「ねぇ凛、今の子って新しい彼女?」
少し間をおいて聞くと、凛は飲んでいたスポーツドリンクを口から離して「そう」と頷いた。
ふーん。
彼女か。
ピーーーーーーーッ!!
「あ、やべ」
すると監督さんの笛が鳴り、凛が慌てたようにドリンクをあたしに手渡してコートに戻っていく。
「全くもー…凛!!がんばってね!!」
受け取ったドリンクごとヒラヒラと手を振ると、凛は少しだけ振り返ってニッと笑ってくれた。