結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
もしかして、山根主任まで……いや、異動は雅人さんだけだったし、またつわりで休みなのかもしれない……
なんて色々考えていたら、隣の楓ちゃんが真剣な顔で迫ってくる。
「蛍子先輩、私、先輩に謝らなくちゃいけない事があります」
「えっ?何?」
「昨夜、彼が帰って来て聞いたんですけど、山根主任の彼って、斎藤次長じゃなかったんですよ。なんでも、本社にもうひとり斎藤さんって人が居て、その人が彼氏だったみたいで……私の勘違いでした」
楓ちゃん……その情報遅過ぎ。もっと早く教えて欲しかったよ……
「それでね、もう一つビックリなんですけど、山根主任、その彼氏ととっくの昔に別れてて、彼氏は別の女性と結婚したらしいですよ。ねっ!驚いたでしょ?」
私の引きつった笑顔の理由など知る由もない楓ちゃんが得意げに鼻を鳴らす。
楓ちゃん、それだけじゃないよ。雅人さんと山根主任は子供が出来て結婚するんだよ。この事を知ったら、楓ちゃん腰を抜かすかもしれないな……
複雑な気持ちで行動予定表を書き、大きく息を吐く。
そして朝礼が終わると、私と一輝は運送会社に向かう為、オフィスを出た。
地下駐車場に着きふたりっきりになると、社用車のドアを開けた一輝に再び雅人さんの事を聞いてみた。
「勘違いするな。別に俺が雅人を異動させたんじゃない。本人の希望だ」
「雅人さんの希望?」
「そうだ。アイツも自分の実力が分かったんだよ。それと、ホタルへの謝罪の為。いずれ操との事が皆にバレる。その時、お前と雅人と操が同じ部に居たらマズいと思ったんだろ。
これがホタルに対するアイツのケジメなんじゃないのか?」