結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】

そして、いよいよ社長室でプレゼンが始まり、皆の視線が私に集中する。それだけで緊張して足がガクガク震え、声が上ずってしまう。


とにかく分かりやすい説明を心掛け、社長達の質問にも丁寧に答えた。そして1時間後、大きな失敗もなく無事プレゼンを終える事が出来た。


社長は一輝のプランを気に入り、その場で契約をすると言ってくれた。和やかな雰囲気で商談は終わり、その後、一輝と社長はゴルフの話しで盛り上がる。


一輝のこの笑顔の裏に隠されてる営利な目的など知らず、嬉しそうに笑ってる社長が気の毒に思えて仕方ない。


で、ようやくふたりのゴルフ談義が終わり、運送会社を出たのはお昼前。


パーキングに戻って社用車に乗り込むと、一輝が「ホタル、よくやった。昼飯ご馳走してやるよ。何がいい?」なんて聞いてくるから私もテンションが上がりウキウキ気分。


「ホント?そうだなぁ~何にしようかなぁ~」


一輝が部長に報告の電話を入れている横であれこれ考え、電話を切るとすかさず「最近、青山にオープンしたばかりのフレンチレストランに行こう」と誘ってみた。


一輝も頷き、車が動き出したんだけど、なぜか青山とは反対方向にウインカーを出す。


「あれ?どこ行くの?」

「気が変わった。ちょっとドライブするぞ」

「ドライブ?仕事中だよ。いいの?」


私の心配をよそに、一輝は悪戯っ子みたいな笑顔を向け言う。


「たまにはいいさ。プレゼンを成功させたご褒美だ」


その笑顔を見て、懐かしさで胸がキュンとした。だってそれは、私が初めて一輝と会った時のあの笑顔と同じだったから……


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