結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
一輝は知らない。私がその笑顔を見て、彼に一目惚れしたって事を……
「なんだよ?人の顔ジロジロ見て」
「あ、うぅん、一輝って、今もそんな風に笑うんだなって思って……」
なんの事か分からないって顔をした一輝が、不思議そうに首を傾げてる。
「ねぇ、一輝、さっき言ってたでしょ。私を一生、食わしてやるって。もしかして……あれ、プロポーズだったりする?」
自分では、平静を装いそう聞いたつもりだったけど、きっと私は凄い形相で一輝をガン見してたに違いない。だって、一輝は私から距離を取る様に体を反らし、どう見てもドン引きしてる。
「ま、まぁ……そんなモンだ」
「そんなモン?」
取り合えず否定されなかったのは嬉しかったけど、相変わらず素っ気ない返事に物足りなさを感じてしまう。
「もっと、ちゃんとした言葉で言ってよ」
「ちゃんとした言葉ってなんだよ?俺は今まで十分、アピールしてきたつもりだぞ。まだ足りないのか?」
確かに、それらしい態度も言葉もあったりした。でも、それだけじゃ不安だったんだ。
あんなうっとりする様な素敵なプロポーズをしてくれた雅人さんが、実は山根主任を忘れる為に私と結婚しようとしてたんだと知って、それがトラウマになり、男の人に対して疑い深くなっていたのかもしれない。
「お願い、一輝の口からちゃんとしたプロポーズの言葉を聞きたいの……」
自分を納得させたいが為、必死で訴える。すると、私を横目でチラッと見た一輝の視線が、なぜか下へと逸れていく。
「―――だったら、そろそろ、ソレ……外したらどうだ?」
「へっ?」