結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】

「おわっ!!」


一輝の視線の先にあった自分の左手を広げて冷や汗タラリ……


私ったら、雅人さんに貰った婚約指輪……まだしたまんまだった。


「いくら俺が寛大でも、他の男から貰った婚約指輪してる女に真面目にプロポーズなんかしたかねぇよ」

「あ、あははは……」


笑って誤魔化すと、素早くダイヤのリングを薬指から引き抜きバックに放り込む。その様子を見ていた一輝が「やれやれ……」って呟きため息を漏らす。


「そんなヌケたとこが、ホタルらしくて可愛いんだけどな」

「それ、嫌味?」

「嫌味半分、本音半分ってとこかな?」


一輝がおちょくった様にそう言った直後、前の車のテールランプが赤く点灯し、私達の乗った社用車も速度を落としていく。


「チッ、渋滞か……ツイてないな」


完全に車が停車すると何を思ったか、突然一輝が私の肩を抱き、耳たぶをペロッと舐めたんだ。


「ちょっ……いきなり何するのよ!隣の車の人に見られたらどうするの?」


慌てて開いていた窓を閉め様とすると、その手を掴み一輝が耳元で囁く。


「でも、そんなに俺にプロポーズしてもらいたいなら、いいんだよな?」

「いいって、何が?」


何も考えずに、そう聞いた私がバカだった。


「―――セックスに決まってるだろ?」


甘くて妖艶な声が耳を掠め、頬が一気に熱く火照る。


「えぇっ?セックスー?」


私が張り上げた大声は隣の車の男性にまで届いたらしく、ニンマリ笑った男性が一輝に向かって「兄ちゃん、頑張れよー」って、手を振っている。


「だってよ。あのオッサンの期待を裏切っちゃ悪いしな。頑張ってみるか?」


< 109 / 306 >

この作品をシェア

pagetop