結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
「おわっ!!」
一輝の視線の先にあった自分の左手を広げて冷や汗タラリ……
私ったら、雅人さんに貰った婚約指輪……まだしたまんまだった。
「いくら俺が寛大でも、他の男から貰った婚約指輪してる女に真面目にプロポーズなんかしたかねぇよ」
「あ、あははは……」
笑って誤魔化すと、素早くダイヤのリングを薬指から引き抜きバックに放り込む。その様子を見ていた一輝が「やれやれ……」って呟きため息を漏らす。
「そんなヌケたとこが、ホタルらしくて可愛いんだけどな」
「それ、嫌味?」
「嫌味半分、本音半分ってとこかな?」
一輝がおちょくった様にそう言った直後、前の車のテールランプが赤く点灯し、私達の乗った社用車も速度を落としていく。
「チッ、渋滞か……ツイてないな」
完全に車が停車すると何を思ったか、突然一輝が私の肩を抱き、耳たぶをペロッと舐めたんだ。
「ちょっ……いきなり何するのよ!隣の車の人に見られたらどうするの?」
慌てて開いていた窓を閉め様とすると、その手を掴み一輝が耳元で囁く。
「でも、そんなに俺にプロポーズしてもらいたいなら、いいんだよな?」
「いいって、何が?」
何も考えずに、そう聞いた私がバカだった。
「―――セックスに決まってるだろ?」
甘くて妖艶な声が耳を掠め、頬が一気に熱く火照る。
「えぇっ?セックスー?」
私が張り上げた大声は隣の車の男性にまで届いたらしく、ニンマリ笑った男性が一輝に向かって「兄ちゃん、頑張れよー」って、手を振っている。
「だってよ。あのオッサンの期待を裏切っちゃ悪いしな。頑張ってみるか?」