結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
耳元で囁くイジワルな声は、私の冷めた体を再び熱くする。
一輝って、どSだったんだ……でも、そんな一輝をイヤじゃないと思ってる私は、どMだったり?
そんな事を考えていたらなんだか妙に恥ずかしくなり、火照って紅くなった頬を見られない様に彼の胸に顔を埋め目を閉じる。
トクントクンと規則正しく響く一輝の心臓の音が、まるで子守唄みたいに心地良くて、いつしかウトウトとまどろんでいたら、ベットの下に散乱してる服の中で彼のスマホが鳴り出した。
こんな時間に誰だろうと顔を上げた私の体を離し、一輝がスーツの上着を手繰り寄せる。
「やっぱりそうか……分かった。ご苦労さん」
それだけ言うとため息を付き、スマホをベットの上に放り投げる。
「何かあったの?」
すっかり目が覚めてしまい、私も起き上がって声を掛けるが「いや、大した事じゃない」と言うだけで、何も話してくれない。
「さっき、一輝が言ってた仕事の事?問題が起こったって言ってたよね?」
「心配すんな。ホタルには関係ない事だ」
私の肩を抱きニッコリ笑った一輝だったけど、その目はちっとも笑ってなかった。
「無理しないでね」とは言ったものの、何も言ってくれない事に一抹の寂しさを感じる。
私に話してもなんの解決にもならないのは分かってる。けど、愚痴くらいは聞いてあげられるのに……結婚しようとしてる私にも言えない事なの?
さっきまで抱き締めてくれていた愛しい人は、布団に潜り込んむと私に背を向け、すぐに寝息を立て始めた。