結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
「どんな噂ですか?」
「客だけじゃなく、名古屋支社の支社長とも不倫関係だとか……色々とね」
「そうですか……」
新田係長がそんな事してたなんて……正直、奥田主任の話しはショックだった。
「だから、新田係長が君に山本常務を紹介するって聞いて、何か裏があるんじゃないかと心配になってね。初アポがホテルのロビーってのも引っ掛かる」
「えっ……奥田主任は、私が山本常務に何かされるとでも思ってるんですか?」
「まぁ、そうだね」
サラッと即答する奥田主任に驚きを隠せない。
まさか、いくらなんでも、そんな事……
「とにかく、用心した方がいい。それでだ。今夜のアポは僕が付いて行く。と言っても、同行じゃなくコッソリとね」
「本当ですか?でも、どうして?」
そうだよ。東京支社に来たばかりの奥田主任が、まだよく知らない私の為に、なぜそこまでしてくれるの?
「君は僕の部下だからね。それに、楓に君の話しをよく聞かされてたから、ずっと前からの知り合いみたいで放っておけなくてさ」
あぁ、そういう事か。楓ちゃん絡みね。
その後、奥田主任と入念な打ち合わせをして、アポの約束の時間まで会社で過ごし、午後7時、新田係長に「行ってきます」と声を掛けオフィスを出た。
奥田主任からあんな話しを聞かされても、私はまだ半信半疑だった。本当に奥田主任が言うように何かあるんだろうか?