結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
もちろん、アポの事は気になる。でも、それより気掛かりな事があった。
一輝は新田係長と山本常務の関係を知ってるのかな……
奥田主任が知ってるくらいだもの知らないワケないよね。知ってたのに、なんとも思わなかったの?
転勤して来たばかりの奥田主任でさえ、あんなに心配してくれたのに、私が山本常務と会う事になっても、一輝は全くの無反応。何も言ってくれなかった。
「はぁーっ……」
ホテルの前で大きなため息を付きスマホを取り出すと、奥田主任と打ち合わせした通り、彼に電話する。
「今、ホテルの前に居ます」
『分かった。僕ももうすぐホテルに着く。じゃあ、このまま通話状態にしてホテルに入って』
「はい」
私はスマホをスーツの胸ポケットに入れホテルのロビーに向かった。
約束の時間までまだ15分あったが、ロビーのソファーにそれらしい人物が座ってるのを見つけ近づくと、かっぷくのいいスーツ姿の男性が笑顔で会釈してきた。
「失礼ですが、宮川商事の山本常務ですか?」
「はい、アクセスの吉美田さんですね。初めまして」
もっと怖そうな人だと思っていたけど、実際の山本常務は物腰の柔らかい人の良さそうな人物だった。
「早速ですが、保険の説明をさせて頂きたいので、あちらのラウンジで……」
そう言って歩き出したんだけど、常務が「ラウンジは、ちょっと……」と尻込みする。
「いやぁ~ラウンジだと落ち着いて話しが出来ないでしょ?私は大切な商談なんかは、いつもホテルの部屋を利用してるんですよ。もう部屋を取ってありますから、そちらで話しを伺いましょう」
うそ……ホテルの部屋って、まさか……