結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
あまりにも簡単にサラッと言われたから、呆気に取られて一瞬ポカンとしてしまった。
「辞めてもらうって……奥田主任に、そんな権限があるんですか?」
「まさか……営業部の主任の僕に、そんな権限はないよ。でも、権限がある人物に君の行動を報告する事は出来る」
この時、私は初めて奥田主任が怖いと思った。そして、奥田主任や一輝が関わっている問題が、私が想像していた以上に大きく、重大な事なんだという事に気付く。
「アクセスで、いったい何が起こってるんですか?」
「それは、今は言えない。でも、近い内に分かるさ。それが明らかになった時、君が斎藤次長と関わってない事を祈るよ」
ここまで一輝を敵視するんだから、奥田主任は一輝の事が相当嫌いなんだと思った。どうしてそんなに一輝を嫌うのか、その理由が知りたい。でも、今までの話しの流れから考えても彼が教えてくれるとは思えなかった。
取り合えず気持ちを落ち着かせようとモスコミュールを一口、喉に流し込む。すると、意外にも奥田主任の方からその理由を話し出したんだ。
「僕がアクセスに入社した当時、一番尊敬してたのは斎藤次長だった。あの人は、僕の憧れだったんだ」
「えっ?」
「営業のノウハウを教えてくれたのも斎藤次長だった。そして、プライベートでも可愛がってくれて、彼の同期の人達しか知らないこのバーにも連れて来てくれた。
僕が名古屋に転勤になって暫く離れていたけど、ニューヨークの本社で再会した時は本当に嬉しかったよ」
「そんなに親しくしていたのに……なぜ?」