結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
寂しげな顔で俯く奥田主任。でも、数秒後、その顔は怒りに満ちた表情に変わった。
「親しかったから……尊敬してたから、許せなかった」
カウンターの上に振り下ろされた彼の拳が震えている。
「斎藤次長の裏切りは、どうしても許せない……」
裏切り?一輝が奥田主任を裏切ったという事はつまり、会社を裏切ったって事?そんなの……有り得ない。
「奥田主任は一輝を誤解してる。一輝はそんな事する様な人じゃない」
興奮して、つい"一輝"って呼ぶと、奥田主任は「一輝か……」と呟き、ため息を付く。
「別れたって言ってるけど、そうやって斎藤次長を庇うとこを見ると、君はまだ、斎藤次長の事が好きなんだね」
「それは……」
「それに、斎藤次長もおそらく、まだ君の事を想ってる」
「えっ……」
そんなはずはないと否定するが、奥田主任の表情は厳しいまま。
「君が宮川商事のプラン書を作成してた時、僕が差し入れたサンドイッチとジュース……あれは斎藤次長に頼まれて君に渡したんだよ」
一輝が奥田主任に?そうか、だから私の好きな卵サンドと白桃ジュースだったんだ……
「その時、斎藤次長は僕に言った。今日のアポは胡散臭いから、新田係長に内緒で吉美田に着いて行って様子を見ててくれって」
「うそ……一輝がそんな事を?」
「あぁ、僕も怪しいアポだと思っていたからそうしたんだ。案の定、その通りになった」
一輝が私を心配してくれてた事が分かり、嬉しくて胸が熱くなる。けど、奥田主任が次に言った言葉でその喜びは絶望に変わった。