結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】

「いえ、それは……知りません」

「そう、なら教えてあげる。私と一輝が別れたのは、アンタのせい。アンタが私達の仲を壊したのよ」


意味が全く分からない。どうして私が関係してるの?


「だから私は、アンタが憎くて仕方なかった。でもまさか、アクセスに……それも班の部下に、一輝の元嫁が居たなんて……」


綺麗な新田係長の顔が怒りで歪む。


「どうして私が斎藤次長の元妻だと分かったんですか?」

「私達が付き合っていた頃、彼が離婚した女の名前は"ホタル"だって言ってたわ。一輝がアンタの父親が入院したってカフェに来た時、アンタを"ホタル"って呼んだ。

それを聞いて鳥肌が立ったわ。こんな近くに、この世で一番憎い相手が居たなんてってね」

「だから私を山本常務に会わせたんですか?」


新田係長は、薄ら笑いを浮かべ「そうよ」と答えた。


「アンタなんて、山本常務にめちゃくちゃにされればよかったのよ。で、ショックを受けてアクセスを辞めてくれれば尚いいと思ったわ」

「そんな……」


どうしてそこまで私を憎むの?私と一輝が別れたのは、新田係長と出会う前。私は彼女と会った事もなかったのに……


言葉を失い呆然と新田係長を見つめていたら、なぜか彼女がニッコリ笑う。


「山本常務の件は失敗だったけど、でも、もういいわ」

「えっ……」

「一輝を取り戻したから。一輝はアンタじゃなく私を選んだの」


さっき奥田主任に言われた言葉が頭の中を掠めた。


"斎藤次長が選ぶのは、新田係長だから……"―――彼が言ってた事は本当だったの?


< 181 / 306 >

この作品をシェア

pagetop