結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
「離婚したくせに、また元サヤに納まろうなんて虫のいい事考えてるんじゃないわよ。一輝は私のモノ。もう彼に関わらないでくれる?」
何もかも奥田主任が言ってた通りだ。本当に、一輝は新田主任と……そんな……そんなのって……
返す言葉が見当たらない。堪らずバーを飛び出し、一輝に真相を聞こうとスマホを取り出す。でも、どうしても通話画面をタッチする事が出来なかった。
怖い……もし、本当に新田係長を選んだと言われたら……一輝の口から真実を聞くのが怖い。
とうとう一輝に電話する事が出来ず、不安な気持ちのまま家に帰った。
家の中はシーンと静まり返っている。そして、一輝が居た隣の部屋も暗く静寂に包まれていた。
一輝……本当に出てっちゃったんだね。もうここには戻って来てくれないだよね。
部屋の明かりを点け、崩れる様にベットに座り込んだのと同時にラインの着信音が鳴る。もしかして一輝からかもと体がビクッと反応し、慌ててスマホを手にするが、それは一輝からではなく楓ちゃんからのラインだった。
《深夜にすみません。電話してもいいですか?》
なんだろうと思いこっちから電話すると、1コールで楓ちゃんが出た。
『こんな時間にごめんなさい。さっき、彼が帰って来て、今日のアポの事聞きました。蛍子先輩、大丈夫ですか?』
そうか……奥田主任に聞いたんだね。
「うん、私は平気。楓ちゃん心配してくれたんだ。有難うね」
そして私は、楓ちゃんからの情報を奥田主任に話してしまった事を彼女に詫びた。