結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】

ったく……呆れて言葉も出ない。ホント、自分勝手なんだから。


父親の手を振り払い無言で立ち上がると、ギロッと睨んで玄関に向かう。


私だって一輝と結婚したいよ。でも、一輝はもう、私の事なんて……


玄関でヒールを履きながら、じんわり滲む涙を瞬きで誤魔化し、父親に聞こえない様に呟く。


「残念だけど、父さんも私も結婚は出来ないかもね……」


一輝が引っ越した高層マンションを眺めため息を付くと、駅へと歩き出した。




「―――おはよう御座います」


気合いを入れてオフィスのドアを開ける。席に着いた私は、まず隣の楓ちゃんと目を合わせ、次に前の席の奥田主任に視線を移す。彼は至って普通で、昨夜の事など無かったみたいに平然としてる。


そして新田係長はと言うと、奥田主任とは対照的に、一目で不機嫌だと分かる目で私を睨んでる。


「吉美田さん、この班でまだ契約がないのは、あなただけよ。せっかく紹介した私の顧客も怒らせるし、仕事する気あるのかしら?」


朝一で嫌味を言われ、益々頭痛が酷くなる。


「月末まで、まだ日があります。必ず契約を取ってきますから」


売り言葉に買い言葉。強気で断言しちゃったけど、充てはない。ここはまた、桐谷さんにお願いするしかないか……なんてズルい事を考えていたら……次長のデスクに一輝の姿がない事に気付く。


あれ?一輝は?まだ来てないのかな?


楓ちゃんに聞いてみると、どうも休みらしい。


「休み?どうしたの?」

「さぁ?さっき、休むって連絡があったみたいですよ」


< 186 / 306 >

この作品をシェア

pagetop