結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
「そう……」
仕事命の一輝が休むなんて珍しいなと思いながら手早く行動予定表を書いてオフィスを出る。
どうせ朝礼に出ても、新田係長に嫌味を言われるのが関の山。そんなのまっぴらごめんだ。
で、私が向かった先は、桐谷社会保険労務士事務所。困った時は、必ずここに来る。
「おや、蛍子ちゃん、久しぶりだね~元気だった?」
いつも温かく迎えてくれる桐谷さんの笑顔を見るとホッとする。
「はい、運送会社の件ではお世話になりました。近くまで来たので寄っちゃいました」
もちろん、嘘だ。桐谷さんの好物の豆大福で機嫌を取り、あわよくば、またお客さんを紹介してもらおうと姑息な事を考えている私。
「でもさ、運送会社の社長、喜んでたよ。アクセスの次長さんと有名なゴルフ場でプレーして、スコアも良かったらしくてさ、その夜は興奮して眠れなかったらしいよ。
でね、その次長さんが他の保険も紹介してくれて、担当の吉美田を宜しくお願いしますって何度も頭を下げてたから検討してみようかなって言ってた」
「えっ?本当ですか?」
一輝が私の為に……でもそれは、私達が仲がギクシャクする前の話し。今は……
「ねぇ、もしかして、蛍子ちゃんのフィアンセって、その次長さん?」
桐谷さんが豆大福を頬張りニンマリ笑う。
確かに一輝にプロポーズされたからフィアンセなんだけど、桐谷さんに話した時のフィアンセは雅人さんだったんだよね。でも、今となっては、一輝ともどうなるか分からない。