結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
「……なんか、結婚、微妙なんですよね」
出してくれたお茶をすすり、ボソッと呟くと、桐谷さんが豆大福にまぶしてあった白い粉を口から吐き散らかし「おぉ!」って叫ぶ。
「そうなの?じゃあ、この前の話し、もう一度考えてくれない?」
「この前の話しって、なんでしたっけ?」
「ほら、僕の知り合いの社長の息子さんとの縁談だよ。あれからも誰かいい人居ないかって、しょっちゅう電話が掛ってくるんだよね。会うだけでも会ってみる?」
いくらなんでも―――「それはちょっと……」
残念そうに眉を下げる桐谷さんに頭を下げ、丁重にお断りする。
そりゃ~本音を言えば、今すぐにでも結婚したい。これが雅人さんにプロポーズされる前なら、間違いなく食いついていただろう。社長の息子なんて、最高の結婚相手だもの。
でも、今の私は、一輝が……彼の事が好きだから……
「すみません」
「いや、無理だったらいいんだよ。でも、その気になったらいつでも言ってね」
「はい」
結局、これと言った紹介は貰えず、桐谷さんも出掛けると言うので、失礼する事にした。
事務所の扉を開けると、立ち枯れた街路樹が北風に吹かれ大きく揺れている。私にはそれが、寒そうに震えている様に見えた。
私も寒い……凍えそうだよ。一輝……あなたの温もりが欲しい―――
重い足取りで会社近くまで来た時だった。
「あ、泰造君!」
「蛍子じゃない。アポの帰り?」
珍しく営業に出ていたという泰造君と偶然会い、一緒にランチをする事になった。泰造君の行きつけのうどん屋さんに入り、泰造君お勧めの肉うどんを注文する。