結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
泰造君は、少し言いにくそうに湯呑のお茶を一口、ゴクリと飲むと「これも、もう言っていいのかな……」そう呟いて湯呑を静かにテーブルの上に置いた。
「その20年前に別れた彼女っていうのが……カラオケ喫茶のママなんだよ」
「えっ……」
「お互い納得して別れたけど、ふたりはずっと独身だった。しっかり者で美人のママだ。言い寄ってくる男も沢山居たはずだよ。それでも結婚しなかったのは、きっと、俊之の事が忘れられなかったから。
そして、俊之も……だから3年前、またふたりは付き合い出したんだと思う。そんな事があったから、僕はふたりに結婚を薦めたんだ」
父親とママに、そんな過去があったなんて……あのふたりは20年以上も想い合って、やっと結婚を決意した。それなのに私は、いい歳して結婚なんて恥ずかしいなんて酷い事を言ってしまった。
父親を散々責めたけど……自分勝手なのは、私の方だったんだ。
「僕からもお願いするよ。どうだろう?俊之とママの事、許してやってくれないかな?」
目の前で頭を下げてる泰造君を見て、私は恥ずかしくて堪らない。
たったひとりの家族である私が、一番に父親の幸せを考えてあげなきゃいけなかったのに……私は、最低の娘だ。
そして、20年もの長い間、父親を想い続けてくれたママに申し訳ないと思った。20年前、私のせいで別れたのに、恨みごとひとつ言わず、笑顔で優しく接してくれてる。
私がママの立場だったら、きっと、あんな風には笑えない。
「泰造君、教えてくれて有難う。もう私、反対しないから……」