結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】

昼食を終えた私達は会社に戻り、一緒にエレベーターに乗ったまでは良かったんだけど、先に降りて行く泰造君が別れ際に言った言葉が胸にグサリと突き刺さる。


「蛍子ちゃんも、一輝と幸せにならなきゃね。それが何よりの親孝行だよ」


それを親孝行と言うのなら、私は親不孝者だ。そして今朝、父親が言ってた事を思い出す。


私と一輝が籍を入れなかったら、ママは父親と結婚しないって……そう言ってた。このままいつまでも一輝の事を曖昧にしてたら、父親達も結婚出来ない。


ハッキリさせなきゃいけない。一輝とちゃんと話そう。


やっと決心した私は一輝に《話しがある》とラインした。が、夕方になっても既読にならない。仕方なく家に帰ると、父親とママが惣菜屋の厨房で何か作ってる。


まだ右手が上手く使えないから暫くは惣菜屋を休むって言ってたのに、どうしたんだろうと思い声を掛けてみたら……


「よう、蛍子、お帰り。今、ママに手伝ってもらって、かぼちゃのそぼろ煮作ってたんだ」

「そんな無理しなくていいよ。もう少し良くなってからにしたら?」

「店に出すやつじゃない。一輝に食わしてやろうと思ってな」

「一輝に?」


なんでも、さっき買い物に出たら仕事に行ってるはずの一輝の車が月極め駐車場に止まったままになってたので、おかしいと思い電話したが出なかったそうだ。


引っ越してから顔を出さないのも気になり、ママにマンションに見に行ってもらったら、一輝が熱を出して寝ていたと。


「えっ、一輝、熱出して寝込んでたの?」


< 192 / 306 >

この作品をシェア

pagetop