結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
冷たい玄関の床に片手を付き、立ち上がろうとした時だった。新田係長が私の抱えているお弁当に気付き「それは何?」と聞いてくる。
「あ、良かったら、これ……斎藤次長に……斎藤次長の好きなモノ作って持って来たんです」
父親が一輝の為に一生懸命作ったお弁当。せめて食べて欲しいと思い差し出すと、新田係長が私の手からお弁当を乱暴に奪い取り蓋を開けた。
とたんに彼女の表情が崩れ「はぁ?何コレ?」って、大声で笑い出す。
「こんなみっともないモノ、一輝に食べさせられないでしょ?アンタ、もっと料理の練習したら?」
「違うんです。それは……」
訳を話そうとした私に、新田係長は蓋が開いたままのお弁当を投げ付けてきた。宙を舞うお弁当箱から中身が飛び出し、一瞬にして玄関の床に無残に散らばる。
「そんな……」
確かに見た目は悪いけど、一品々父さんが不自由な手で作ってくれた愛情の籠ったお弁当なのに……酷い……
今まで感じた事のない強烈な怒りが脳天を貫き、ワナワナと体が震えた。
「……許せない」
怒りに我を忘れた私は新田係長に飛び掛かり、彼女に馬乗りになって拳を振り上げる。
「私の事をバカにするのはいい!でも、父さんの料理をバカにしないで!」
泣き叫び、拳を振り下ろそうとした時、掠れた怒鳴り声が響いた。
「ホタル、やめろ!」
「……一輝」
辛そうに肩で息をしながら一輝が近づいてくる。