結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
ブチ切れた者同士の喧嘩は手加減なしだ。取っ組み合いになり、ソレは徐々にエスカレートしていく。
「いいや、許さん!お家断絶なんぞになったら御先祖様に申し訳ない。お前は一輝を婿に取って、この吉美田家を継ぐんだ」
「だから、勝手に決めないでって言ってるでしょ?第一、一輝だってそんな事言われたら迷惑だよ!」
そりゃそーだ。離婚して10年。一輝も私の事なんて綺麗サッパリ忘れてるよ。って思ったのに……
「別に迷惑じゃないぞ」
なんて言うから、一瞬私の動きが止まった。
「一輝……冗談はやめてよ」
慌ててそう言うも、一輝はまた切れ長の目を細め微笑む。その笑顔を見て、なぜか心臓がドクンと跳ねた。
「冗談に聞こえたか?」
「えっ……」
あぁ~ダメダメ!10年前、この笑顔に騙されてエラい目に合ったんだ。同じ失敗は繰り返しちゃダメ。それに、私には愛する彼が居る。
安っぽいTシャツにジーパンなんて、相変わらず貧乏ったらしい格好の一輝とは全然違うエリートの雅人さんが……
「ほら見ろ!一輝はまた養子になってもいいと言ってる。今日からまたワシらは家族だ」
「フン!そんなのまっぴらごめんだよ!」
私はバラの花束を拾い上げると中指を突き立て、2階の自分の部屋に駆け込んだ。