新社会人の私と不機嫌な若頭
『涼介さん……?』
「ん?」
『邪魔でしょ?退けますよ』
「いや、邪魔じゃない」
邪魔でしょ、どう見ても……
動くにも動けない
何もできない……
あえて出来るとしたら
涼介さんと一緒に本を読むこと
……と、邪魔すること
涼介さんの読む本は……正直難しい
だから邪魔する方を選ぶ
けど、何しても涼介さんは動じない
しまいには
「煽るな、まだし足りないのか?」
そんな言葉が返ってくる
『涼介さん…今日はお出かけする?』
休みの時は家で過ごすか
私の物を買いに行くって言い出すか…
けど、今日は違った
「ああ、岸谷の家に行く」
えっ?……引っ越してきて
岸谷の家に行くなんて言うのは初めてだ
「夜に行くから、それまでは休んでろ」
「まず、風呂入るか…」
そう言って私を抱きかかえてバスルームへ歩き出した