新社会人の私と不機嫌な若頭



『…あなたも…大変ね』


そう言うと、彼は苦笑いした


「……前は……違ったんだ……」


彼はそれだけ言って、部屋から出て行った


悲しそうな顔していた
少しだけ涼介さんの顔と重なった


悲しそうな涼介さんの顔と……
私が起こった時の顔と
そう思い出したら、笑える


早く……涼介さんに会いたい
私を探してくれているのはわかった
だから、大丈夫。




いつの間にか寝てしまった私
なにかが触れて、目を覚ます


『ん……いてっ』


頬に冷たいものが触れた


「悪い」


それは彼の声だった
彼はあの女に叩かれた頬に貼ってあった
アイスシートを取り替えてくれていた


『……優しいね』



「…別に」


彼は無言でアイスシートを取り替えてくれたり、腕に付いた引っ掻き傷を消毒してくれた


やっぱり、彼は優しい
多分、私を拉致したくてしたわけじゃない
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