新社会人の私と不機嫌な若頭


その次の日も
女は私に暴行を加え
サインをさせようと必死だった


「早くサインすれっつーんだよっ」



「やめろって、今日はもういいだろっ」


さすがにやばいと思ったのか
彼が止めに入った


私の意識なんて、とうに無い



「大丈夫か?おい、しっかりしろ」


彼が必死に呼んでいる
けど、私には届かない




「杏奈……杏奈……」


涼介さんの声が聞こえる
私の大好きな声


「大丈夫、俺のそばにいろ」



涼介さん……涼介さん
行かないで……お願い……




目がさめると、変わらない場所
その瞬間、お腹の中から何かが上がる


『うぇっ……』


「大丈夫か?」


そう言って背中をさすってくれた



「あんた、サインした方がいい。じゃないと殺される」


殺される?
涼介さんがいない世界なら
私は生きたくないよ。
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