新社会人の私と不機嫌な若頭
剥がされた仮面
やっぱり今日も目がさめると
「飯、食えるか?」
彼が心配そうに私を見てくる
私は横に首を振る
何もしたくない
何も考えたくない
ただ、ボロボロな身体を休めるだけ
私の横に彼が座り頭を撫ぜてくれた
彼は彼で私を守ろうとしてるんだろう
その時、部屋のドアが開いた
いつもは黒系の服を着ているのに
今日は可愛らしい格好
それがなんとも可笑しく思えた
「まだサインしてないのかよ、涼介もしびれきらしちゃってさ。私と一緒になりたくてイライラしてんの。だから早くしてくんない?」
今日は珍しく、私の方には近づいてこない
可愛らしい格好で汚れでもついたら嫌なんだろう。
「また後でくるから、それまでにサインさせといてよっ」
そう言って女は出て行った
サインはしない……
そう決めている
けど……ボールペンを握ることに
なるなんて思いもよらなかった。