甘々王子にユウワクされて。
「言いたいことくらいはっきり言えるようになれよ、いらつくから」
彼は手元のスマホから目を離さずに冷たく言った。
スマホと言ってもゲームなんかしていなくて、何かの情報を見ているような画面。
……そんなの、わたしが一番わかってるのに。
会ってすぐの人に言われちゃうなんて。
「え、君、席隣だったんだ!
ごめん邪魔だったでしょ」
少し落ち込んでいたら、今度は反対側から掛けられた声。
無垢な笑顔が羨ましくて少し胸が痛む。
「いえ……大丈夫です」
さっきあんな恥ずかしい思いしたからか、まっすぐ顔を見れない。
なるべく早く会話を切り上げたいなぁ、なんて思っていたのに。
「俺木林侑心。名前は?」
自己紹介されてしまった。
きりん、なんて……背の高い彼にぴったりの名字。
「……佐久間、結羽です」
名乗られてしまったら仕方ないので、渋々名前を告げる。