甘々王子にユウワクされて。



「ごめんごめんいじわるして! わかってるよ、わざといたわけじゃないもんね。
 結羽ちゃんは屋上に絵を描きに来たんでしょ?」


「は……はい」



からかわれていたのか。


いまだどきどきしながら次の楓さんの発言に注意を向ける。



聞いていたことに対して怒られてしまうのだろうか。


こんな素敵な先輩に嫌われてしまうのだろうか。




だけど彼女は目を伏せて言った。



「……あの日。あたしとあっきーの話を聞かせちゃってごめんね。
 不快になったよね」



長いまつげを惜しげもなくさらして、憂いだ表情を見せる。


やっぱり綺麗だな、と思うと同時に。



どうして楓さんが謝るのだろう、と焦りも感じた。


彼女に謝らせてはいけない、という焦り。


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