甘々王子にユウワクされて。
そしてひとつ大きな花火が上がったと思うと、空は何事もなかったかのように静かになる。
終わったんだ、長い長い文化祭が。
『以上で文化祭全日程を終了します。校舎に残っている生徒は、施錠を行いますので――――』
楓さんの声が放送で響いた。
「あ……鍵かかっちゃうんですね、行きましょうか木林くん」
少し名残惜しかったけれど、窓のカギを確認して歩き出そうとする。
だけど、
「……木林くん?」
全然降りようとしない木林くん。
早くしないといけないのに。
そう思っていると、
「……ねぇ結羽。その”木林くん”っていうの、いい加減やめない?」
そう言って、夜を背中にいたずらっぽく笑った。