甘々王子にユウワクされて。
あぁついてないな。
苦手なんだよ、人の席に勝手に座る人。
しかも彼女たちはお行儀悪く机に座ってるし。
黒板に書いてある席順の、『佐久間結羽』の字が見えないの?
……困った。
はやくこの、部活の用意でいっぱいになった重い鞄を席に置きたいんだけど、
わたしにはとても、あそこに突っ込んでいく勇気はない。
だけど新しいクラスにともだちはいないから適当に時間をつぶすこともできないし……。
去年は部の仲間がクラスにいたから、その子とよく話していたけれど……。
どうしようどうしようとそちらをちらちら見ていると。
「……ん?」
や、やばいっ!
群れの真ん中にいる男の子と思いっきり目が合ってしまった。
慌ててばっと顔ごとそらす。
そして直後に、あぁ態度悪い、と後悔。
だけど彼は、がたんと音を立てて立ち上がった。
周りの女の子が驚いたように、猫なで声で、どうしたのと尋ねる。