甘々王子にユウワクされて。
あんな空間、居たくなかった。
1年間憧れていた先輩が、美人な先輩に笑いかける姿なんて見て居たくなかった。
失礼なことは分かっているけれど、あの場から逃げたかった。
だからわたしは、そっと呟いた。
「……ありがとう」
小さな小さな声で。
彼に聞こえていたかはわからないけれど。
だけどその瞬間、ほんの少しだけ、
木林くんの手がわたしの手を強く握りしめた気がした。
この人にならどこに連れ去られてもいいや、なんて
くだらないことを思ったりもした。
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