甘々王子にユウワクされて。
本を持つ手が、なぜか震えてしまう。
今さら何に怯えているんだろう。
……木林くんに嫌われること?
いやまさか、そんなはずはない。
彼のせいで、言われる必要のなかった悪口をどれだけ言われたことか、どれだけ迷惑かけられたことか。
わたしの苦手な彼に嫌われて困ることなんて一つもないのに。
「……結羽。どうした?」
そう必死に感情を誤魔化していたのに、目ざとく震えを見つけ、わたしを気遣ってか耳元で話す彼。
茶色の髪がわたしの耳に触れて、ついびくんとからだが跳ねる。
「……なんでも、ないです」
精一杯声を張って、震えに気づかれないようにした。
おかしいのは明らかにばれているだろうけれど。