恋とは停電した世界のようです
かわいくなくちゃいけない理由






「麻友子さぁ…すきな人できた?」

「はっ?」

冬休みに入ってから1週間目の午後。
心美と一緒に駅地下のプラザで買い物をしているときのことだった。

マスカラを手にしたまま
ロングとボリュームタイプって、どっちが良いんだろう…と
テスターの前で うんうん悩むわたしに彼女は そう尋ねてきた。

「なんで?」

「だっていつもなら、こういうのにお金かけるの渋るじゃん」

「…う、ん。まぁ…」

「で、好きなの?」

「いや、なんていうか…そろそろ始めなきゃ、やばいかなっていうぐらいで」

「ほんとに?」

「…う、」

じとりと目を細めてくる彼女の迫力にたじろいでいると

「だって、そうでもなきゃ今までお菓子や漫画にお金かけてたあんたが、いきなり興味持つわけないでしょう」

きっぱりとした口調で言い切られてしまった。

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