恋とは停電した世界のようです

「…はい?」

おそるおそる顔を上げると、
紺色の傘を手にしたルーカスさんの姿が瞳に映って

どうしてこんなところに、とか
すごい偶然だなと驚いていると

「とりあえず、これを…!」

と慌てた様子でスーツのポケットからハンカチを差し出された。

「え、でも」

汚してしまわないか戸惑うわたしに
彼の顔が一瞬にして曇った。

そのまま、スッと彼の白い指が伸びてきて
半ば強引に二つ折りにされたハンカチを握らされたので

すみません…と謝りながら髪の毛を拭いていると

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