【続】Am I What Colors?ー現姫の戦いー
「くそ、誰も俺のことなんて相手にしてくれねーんだ…」
「…諒真さん、分かったからとりあえず床を……」
まだいじけている諒真さんをなだめようと声をかけた、そのとき。
「本田さん、検診の時間です……
……って、え!?」
ガラッと病室のドアを開けて、担当である矢崎先生が入ってきた。
フワッとした茶髪に、黒縁の眼鏡。
インテリ系イケメンの、矢崎真人医師だ。
「な、何ですかこれは…!水浸しじゃないですか……。いや、この匂いは…ビール!?」
「あ、当たり!さぁっすが先生、鼻がいい!」
そんなことを言って誤魔化そうとした諒真さんを、矢崎先生は軽く睨んだ。
「……病室をビールまみれにするなんて…。非常識にも程がありますよ」
まぁ、そりゃそうだよね……
そもそも院内には酒タバコ持ち込み禁止だし。
「はぁ…。まぁ、片付けてくれればそれでいいです。それより本田さん、検診です」
「あ、はい」
「この部屋でやるんで、皆さんは退出してもらっていいですか?」
矢崎先生がそう言うと、なぜか蓮央がムッとした顔になった。
「…ただの検診なら、看護師にやらせりゃいいだろ」
「あいにく、本田さんは重症患者なので。
私が直接診なければならないんです。
……それとも何ですか?もしかして、ヤキモチとか…ですか?」
「っ……」
思わず言葉に詰まった蓮央を見て、クスリと笑う矢崎先生。
「…時間が無いので、退出お願いします」
「……分かったよ」
不機嫌なムードを残したまま、蓮央たちは渋々といった顔で病室から出て行った。